大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成6年(ワ)25294号 判決 1996年11月13日

原告

古川徹

被告

関口保男

ほか一名

主文

一  被告らは、原告に対し、金七六三万〇九七九円及び内金六九三万〇九七九円に対する平成三年一二月二四日から、内金七〇万円に対する平成八年一一月一四日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを五分し、その四を原告の負担とし、その余は被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは、各自、原告に対し、金三六六八万五四五一円及び内金三四四八万五四五一円に対する平成三年一二月二四日から、内金二二〇万円に対する平成八年一一月一四日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要(当事者間に争いがない)

一  本件事故の発生

1  事故日時 平成三年一二月二四日午前七時一五分ころ

2  事故現場 千葉県東金市小野先国道一二六号線上(以下「本件道路」という。)

3  原告車 普通乗用自動車

運転者 原告

4  被告車 普通貨物自動車

運転者 被告関口保男(以下「被告関口」という。)

所有者 被告株式会社合同運輸(以下「被告会社」という。)

5  事故態様 原告が、原告車を運転し、片側二車線国道一二六号線の成東町方面から千葉市方面に向かう車線(以下「原告車線」という。)の中央分離帯側車線(以下「第二車線」という。)を直進中、千葉市方面から成東町方面に向かう車線(以下「被告車線」という。)を被告車が対向進行してきて路外のガソリンスタンドに入ろうとし、中央分離帯の切れ間から右折したため、これを避けようとした原告車と被告車が原告車線上側の歩道側車線上(以下「第一車線」という。)で衝突した。

二  責任原因

1  被告関口

被告関口は、右折をして路外に出ようとしたのであるから、対向車線上の車両の有無及び動静を注視して進行すべき注意義務があるにもかかわらず、これを怠つて進行した過失によつて本件事故を起こしたのであるから、民法七〇九条により損害を賠償する責任を負う。

2  被告会社

被告会社は、被告車を所有して、運行の用に供していたものであるから、自動車損害賠償保障法三条により、原告に生じた損害を賠償する義務がある。

三  争点

1  原告の傷害の症状固定時期及び原告の後遺障害の程度

2  過失相殺の可否及び過失割合

第三争点に対する判断

一  原告の傷害の症状固定時期

1  原告は、本件事故によつて右膝関節開放性骨折等の傷害を負つたところ、原告は、右傷害の症状が固定したのは平成六年九月一九日と主張するのに対し、被告は同年一月一八日に症状が固定したと主張している。

2  争いのない事実、甲一ないし四、一二、一四、乙五ないし七、八の一ないし七、証人李笑求の証言、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。

(一) 原告は、本件事故によつて受傷し、医療法人社団慈優会九十九里病院(以下「九十九里病院」という。)に、事故当日の平成三年一二月二四日から平成四年二月二六日までの間入院した後、平成五年六月三〇日まで通院し、同年一一月五日から同月一三日までの間抜釘手術のため入院し、さらにその後、平成六年一月一八日から同年七月三日までの間通院してそれぞれ治療を受けた。九十九里病院の医師は、平成五年二月二三日ころには、原告の傷害は後二、三か月で症状が固定する見込みであると考えていた。平成五年夏以降は、原告に対して根治療法はほとんど施術されず、運動療法、理学療法が施術されているだけであつたところ、平成六年一月一八日付けで、原告の症状は固定し、右膝関節が不安定で約一・五センチメートルの前方引き出しが認められる、膝関節に他動で左一三〇度、右一四五度、自動で左一一〇度、右一三〇度の屈曲制限、伸展各〇度の関節機能障害が残存する旨診断した(なお、甲二の関節機能障害の記載は、屈曲と伸展を誤記していると認められる。)。ところが、原告は、症状固定との診断について十分な説明を受けておらず、了解していないと医師に対して不服を述べたため、九十九里病院の医師は、後日再度後遺障害診断をする旨説明した。

(二) その後、原告は、九十九里病院への通院を止め、同年七月一四日から同年九月二九日まで東金整形外科病院(以下「東金病院」という。)に通院した。東金病院では、格別の根治療法は施術されず、運動療法と理学療法が施術されたが、原告の症状は初診時と比して顕著な改善は認められず、同月一九日付けで、右膝については九十九里病院での平成六年一月一八日付後遺障害診断と概ね同内容の後遺障害が残存する旨診断されたほか、左膝についても、外反強制位で関節裂隙が七ミリメートルあり、動揺が著明の後遺障害が残存するほか疼痛も残存する旨診断された。

3(一)  右認定の事実によれば、九十九里病院で後遺障害診断をされた平成六年一月一八日の時点と東金病院で後遺障害診断をされた平成六年九月一九日の時点での原告の右膝の可動制限、膝関節の動揺等の症状にはほとんど変化はないこと、左膝の症状についても、東金病院に通院後に生じたものとは認められず、九十九里病院においても症状は認められたものの、九十九里病院の医師は後遺障害として認める程度の症状ではないと判断したのに対し、東金病院の李医師は、後遺障害として認める程度の症状であると判断したものと解されること、原告は、東金病院では運動療法と理学療法が施術されただけで格別の根治療法は施術されていないこと、李医師も、九十九里病院の医師の症状固定の診断が医学的に誤つているとは証言していないことに鑑みれば、平成六年一月一八日付けで症状が固定したとの前記診断が不相当とは認められない。

原告は、症状固定との診断について十分な説明を受けておらず、原告が了解していないと主張して、九十九里病院の医師の症状固定の診断は不当である旨主張している。しかしながら、症状固定の診断は医師が患者の症状を考慮して自ら判断するものであり、保険会社の意向や患者の意向とは本来関係がないものであり、原告が了解していないとの理由だけで小沼医師の症状固定との診断が誤診であると認められるものではない。右のとおり甲二の後遺障害診断書作成経過は、原告が主張するような不合理なものとは認められないので、原告が症状固定との診断について十分な説明を受けておらず、原告が了解していないので平成六年一月一八日付の症状固定の診断が不当である旨の原告の主張は採用できない。

しかしながら、症状固定をいつと認めるのが相当かの判断は、医学的判断が重要であることは言うまでもないが、休業をいつまで認めるかの問題とも言え、かかる観点から見れば、平成六年一月一八日以降も今しばらくの間治療に専念したいとの原告の心情は理解できるものであり、李医師も機能回復のための治療が有効であると考え、原告に対し運動療法と理学療法を施術したのであるから、東金病院での治療も十分に合理性が認められる。

(二)  よつて、本件では症状固定時期は平成六年九月一九日と認めるのが相当である。

二  原告の後遺障害の程度

1  原告には、右膝関節が不安定で約一・五センチメートルの前方引き出しが認められること、左膝についても、外反強制位で関節裂隙が七ミリメートルあり、動揺が著明の後遺障害が残存すること、膝関節に他動で左一三〇度、右一四五度、自動で左一一〇度、右一三〇度の屈曲制限、伸展各〇度の関節機能障害が残存すること、自動車保険料率算定会が、原告の後遺障害を、右膝は関節動揺で自動車損害賠償保障法施行令別表の後遺障害等級(以下「後遺障害等級」という。)一二級七号、可動制限は同非該当、左膝は関節動揺及び可動制限は同非該当であるが、神経症状で同一四級一〇号と認め、これらを合わせて同併合一二級と認定したこと、原告の右膝の症状が少なくとも後遺障害等級一二級七号に該当し、左膝の疼痛と合わせて原告に少なくとも同一二級相当の後遺障害が残存することは当事者間に争いがないところ、原告は、左右の足に機能障害が残つており、右膝の障害は後遺障害等級一〇級一一号に、左膝の障害は同一二級七号に、それぞれ該当するので、原告の後遺障害等級は同併合九級であると主張している。

2(一)  後遺障害等級認定は、労働者災害補償保険における障害等級認定基準(労働基準局長通牒、以下「認定基準」という。)に従つて判断するのが相当であるが、右認定基準によれば、下肢の動揺関節については、日常の行動において多少の支障があつても、常時固定装具を着用する必要がないものを「機能に著しい障害を残すもの」として後遺障害等級一〇級一一号に、普通の労働や日常の行動には固定装具の着用を必要とせず、重激な労働などに対してのみ着用するような場合を「機能に単なる障害を残すもの」として後遺障害等級一二級七号に該当するとしているところ、後遺障害診断書(甲二、四)やカルテ(乙五、六)によれば、原告は、入院中や機能回復訓練の際に一時的に松葉杖や車椅子を使用したことがあること、思い切つて走ることはできないが、ジヨギング程度なら可能であること、三〇分以上の長時間の起立を続けたり一時間以上の運転を続けた場合には、右膝痛が増強することが認められるが、固定装具を着用していると認めるに足りる証拠はなく、また、普通の労働や日常の行動に際して固定装具の着用を必要とすると認めるに足りる証拠もない。

(二)  東金病院の李医師は、証人尋問の際に、原告の右膝の動揺は後遺障害等級一〇級でもよいと思われると供述しており、原告は、右供述を元に、原告の右膝の動揺は後遺障害等級一〇級に該当すると主張している。しかしながら、李医師は、平成七年一〇月二一日の時点で、前記のような原告の症状を前提に、原告の右膝の後遺障害等級は一二級であると診断していたところ(甲八)、原告の症状は、李医師が右膝の動揺関節が一二級に該当すると診断した甲八を作成した平成七年一〇月二一日の時点と法定での証言時とでは全く異なつていないにもかかわらず、証人尋問期日において、突然、原告の右膝の後遺障害等級は一〇級に該当すると考えてもよい旨供述を変遷させたものであり、李医師が、原告の右膝の後遺障害等級に対する考えを変遷させた理由を十分に説明していないことに鑑みても、李医師の供述の変遷には合理性は認められず、李医師の法廷供述のみをもつて、原告の右膝の症状が後遺障害等級一〇級一一号に該当すると認めることはできない。

(三)  その他、原告の右膝の症状が後遺障害等級一〇級一一号に該当すると認めるに足りる証拠はないので、原告の主張は採用できない。

3(一)  次に原告の左膝の関節動揺についても、後遺障害診断書やカルテ上、原告が固定装具を使用したり、固定装具の装着を必要とする旨の記載はなく、原告の左膝関節の左右の動揺は七ミリメートルであること、後記のとおり左膝の可動制限域は正常範囲内であることなどを考え合わせると、原告の左膝の関節動揺の症状が後遺障害等級一二級七号に該当するとは認められない。

(二)  李医師は、膝関節の左右の動揺は五ミリメートルを超えると異常と認められ、原告の左膝関節の左右の動揺は七ミリメートルあるので後遺障害等級一二級七号に該当すると供述しており(甲八、証人尋問期日の供述)、原告は、右李医師の供述を根拠として、原告の右膝の症状が後遺障害等級一〇級一一号に該当すると主張している。

ところで、左膝の関節動揺の症状については、東金病院に通院後に生じたものとは認められず、九十九里病院においても同様の症状は認められたものの、九十九里病院の医師は後遺障害として認める程度の症状ではないと判断したのに対し、東金病院の李医師は、後遺障害として認める程度の症状であると判断したものと認められる。李医師は、九十九里病院の医師が左膝の関節動揺について記載を漏らしたのではないか思うと供述しているが、原告は、九十九里病院での初診時から左膝に受傷して治療を受けていたのであり、後遺障害診断書にも可動制限等左膝の他の症状については記載が認められることに鑑みても、九十九里病院の医師が左膝の症状を見誤つたと考えるのはいかにも不合理であり、九十九里病院の医師は、原告の左膝の動揺の程度は後遺障害として認める程度の症状ではないと判断したと認めるのが相当である。したがつて、李医師の前記供述のみを根拠にして、原告の左膝の動揺が後遺障害等級一二級七号に該当すると認めるには足りない。

(三)  その他、原告の左膝の症状が後遺障害等級一二級七号に該当すると認めるに足りる証拠はないので、原告の主張は採用できない。

4  次に、原告の膝関節の可動制限は、他動で左一三〇度、右一四五度、自動で左一一〇度、右一三〇度の屈曲制限、伸展各〇度と認められるところ(当事者間に争いがない。)、一般に日本人の平均的な膝の運動領域は、屈曲一三〇度、伸展〇度であり、正常運動領域は一三〇度となるので、原告の両膝の可動制限は正常域であり、いずれも後遺障害等級には該当しないと認められる。

なお、右膝の醜状は留保されているが、仮にこれが後遺障害に該当するとしても後遺障害等級一四級に該当するに過ぎないから、結局、併合一二級との認定は覆らない。

5  以上の次第で、原告の後遺障害は、右膝の関節動揺で後遺障害等級一二級七号、可動制限は同非該当、左膝の関節動揺及び可動制限は同非該当であるが、左膝の局部の神経症状で同一四級一〇号と認められ、これらを合わせて併合一二級と認めるのが相当であるから、原告の主張は採用できない。

三  過失相殺

1  当事者の主張

被告らは、本件事故に際しては、原告にも、前方不注視、速度超過、不適切な車線変更をしたこと等の過失が認められるので、本件では、その損害から少なくとも二五パーセントの過失相殺をすべきであると主張するのに対し、原告は、原告には過失は認められず、過失相殺は認められるべきではないと反論する。

2  当裁判所の判断

(一) 争いのない事実、甲七の二の一ないし四、七の三、七の五の一ないし三、七の六の一ないし三、七の一〇、乙一〇、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば以下の事実を認めることができる。

(1) 本件道路は、千葉市方面と成東町方面を結ぶ国道一二六号線であり、片側の幅員が七・四メートルで中央分離帯で車線が区分され、かつ、歩車道の区分された片側二車線のアスフアルトで舗装された道路である。

本件事故現場付近は直線で、視界は良好であり、速度制限は法定の毎時六〇キロメートルに規制されている。本件事故当時は早朝で交通量は閑散としていた。

(2) 被告関口は、被告車線の第二車線上を進行中、原告車線側路外にあるガソリンスタンドに入ろうとし、中央分離帯の切れ間付近で一旦停止し、原告車線を確認したが、前方約三八・五メートル地点の第二車線上を対向進行してくる原告車を発見したが、先に路外に進行できると軽信し、そのまま右折をしたところ、原告車線の第一車線上で原告車と衝突した。

一方、原告は、原告車を運転し、原告車線の第二車線を時速約七〇キロメートルで直進してきたが、前方約三〇メートルの地点に路外のガソリンスタンドに入ろうとしている被告車を発見したが、被告車が右折することはなく先に通過できると考え、そのまま直進したところ、被告車が中央分離帯の切れ間から右折してきたため、これを避けようとして左にハンドルを切つたものの、被告車と第一車線上で衝突した。

(二) 右認定の事実によれば、原告にも、制限速度遵守義務違反の過失が認められるので、過失相殺をするのが相当と認められるところ、本件事故は、右折して路外に進行しようとした被告車と直進中の原告車の衝突事故であり、第一次的には被告に原告車の通行を阻害してはならない注意義務が課せられていること、本件事故は片側二車線の幹線道路であり、本件事故現場も直線で見通しが良く、原告車の動静を誤認した被告関口の前方不注視違反の程度は著しいこと、原告にも、制限速度を約一〇キロメートル超過した時速約七〇キロメートルで進行していた過失は認められるが、制限速度遵守義務違反の外には原告に過失は認められないことなど、本件事故の態様、原告、被告双方の過失に鑑みると、本件では、原告の損害から一〇パーセントを相殺するのが相当であると認められる。

第四損害額の算定

一  原告の損害

1  治療費 四万〇四〇八円

東金病院の治療費は、甲一六の一ないし五六によれば、四万〇四〇八円と認められる。

2  通院交通費 一一万三三〇〇円

甲二、四、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故によつて五五日間通院して治療を受けたことが認められること。一回の通院にバスとタクシーを利用して往復合計二〇六〇円を要したことが認められるので、通院交通費は一一万三三〇〇円と認められる。

3  休業損害 三八万九二一四円

原告は、本件事故当時の収入は一か月当たり二八万五〇〇〇円の年収三四二万円であると主張するが、これを認めるに足りる証拠はないところ、被告は、原告の一日当たりの収入を九二六七円、年収は右の九二六七円に三六五日を乗じた三三八万二四五五円であることを認めているので、被告の認める限度で原告の収入を認める。原告は、平成六年八月八日までの休業損害については被告から支払い済みであるとして本訴では請求しておらず、同月九日から五か月間の休業損害を請求しているが、右請求にかかる期間中、休業損害として認められるのは、症状が固定した平成六年九月一九日までの四二日間と認められ、その後の損害は後遺障害逸失利益として認められるべきものである。

前記認定のとおり、原告は、右の期間就労することができず、収入を得ることができなかつたと認められるので、原告の休業損害は、九二六七円の四二日分の三八万九二一四円と認められる。

4  逸失利益 一〇二四万八七一六円

原告が症状固定時二六歳であつたことは当事者間に争いがない。原告は、原告の後遺障害は九級に相当し三五パーセント労働能力を喪失したので、原告の逸失利益は、三四二万円に労働能力喪失率三五パーセントと四〇年間の新ホフマン係数二一・六四三を乗じた金二五九〇万六六七一円であると主張する。しかしながら、前記認定のとおり、原告の本件事故時の年収は三三八万二四五五円である。また、前記認定のとおり、原告の後遺障害は一二級に相当すると認められるので、原告は本件事故によつてその労働能力を一四パーセント喪失したと認められる。他方、逸失利益の認められる期間が症状固定後二〇年間との被告の主張を認めるに足りる証拠はない。したがつて、原告の逸失利益は、右三三八万二四五五円に労働能力喪失率一四パーセントと四〇年間の新ホフマン係数二一・六四二六を乗じた額である金一〇二四万八七一六円と認められる(円未満切り捨て。以下、同様。)。

5  慰謝料 五〇〇万円

原告が症状固定までに要した入通院期間、原告の後遺障害の程度、その他、本件における諸事情を総合すると、本件における慰謝料は、傷害慰謝料が二三〇万円、後遺障害慰謝料が二七〇万円の合計五〇〇万円と認めるのが相当である。

6  その他の損害 七九四万二三八二円

被告が原告に対し、休業損害五五九万四二七四円、看護費二八万九三五五円、文書費八二四〇円、雑費六万九二三三円、治療費一九六万二二八〇円、装具費一万九〇〇〇円及びその他六四八万七三二一円の合計一四四二万九七〇三円を支払つた事実は当事者間に争いがない。この内休業損害五五九万四二七四円、看護費二八万九三五五円、文書費八二四〇円、雑費六万九二三三円、治療費一九六万二二八〇円及び装具費一万九〇〇〇円の合計七九四万二三八二円は原告が支払い済みとして請求していない部分についての支払であるが、過失相殺を行う前提として原告の全損害額を認定する必要があるのでこれらを含めて原告の損害額を認定する。

7  合計 二三七三万四〇九二円

二  過失相殺 二一三六万〇六八二円

前記のとおり、本件ではその損害から一〇パーセントを減額するのが相当であるから、その結果、原告の損害額は二一三六万〇六八二円となる。

三  既払金 一四四二万九七〇三円

当事者間に争いがない。

四  損害残額 六九三万〇九七九円

五  弁護士費用 七〇万円

本件訴訟の難易度、審理の経過、認容額、その他、本件において認められる諸般の事情に鑑みると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当額は七〇万円と認められる。

六  合計 七六三万〇九七九円

なお、原告は、弁護士費用を除く損害は本件事故の日である平成三年一二月二四日から、弁護士費用については第一審判決の言渡の日の翌日から、それぞれ遅延損害金の支払を求めているので、弁護士費用を除く損害である六九三万〇九七九円については平成三年一二月二四日から、弁護士費用七〇万円については平成八年一一月一四日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払いを認める。

第五結論

以上のとおり、原告の請求は、被告らに対して、各自、金七六三万〇九七九円及び内金六九三万〇九七九円に対する平成三年一二月二四日から、内金七〇万円に対する平成八年一一月一四日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の請求はいずれも理由がない。

(裁判官 堺充廣)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例